化学技術を使わない方が良いところ

森 孝仁

2009年01月15日 22:27

世の中に流通しているルビーのほとんどが「加熱処理」

が行われたルビーであるということは意外と知られて

いません。もとは色が悪くて宝石としては使えない

原石を現代の技術で宝石として販売できる品質まで

見た目を改良することが可能になりました。

鑑別機関が発行する鑑別所にも「ルビーは一般的に

加熱による色の改良が行われている」と明記されています。

加熱処理をして美しさを改良したルビーも

きちんと情報開示をして販売すれば良い。。。という方も

いらっしゃいますが、そのジュエラーが加熱処理とは

何なのかをご存知なのか? はいささか疑問です。

私たちモリスは、無処理で美しいルビーこそ「宝石」

だと思います。

。。というわけで、私たちモリスは、無処理で美しいルビー

を専門にした時から、美しさに欠けるルビーの原石を

自分たちで加熱して、その加熱前、後のデータを集めて

います。自分の眼で確かめられないのに、これは無処理

(非加熱)で美しいルビーです。。というのはおかしい

と思うからです。

私たちの実験の結果では、ルビーはポケットに入れていても

シャワーを浴びても色の変化はありません。

しかし、600度の温度で5時間加熱すれば、ルビーを含め

コランダムの59%の結晶の色が目視でも、分光器の数値でも

変化することが分かりました。

400度以下ではほとんど変化はありません。

写真は、600度で5時間ルビーの原石を加熱した時の内包物

の変化です。左側は加熱前、右側は加熱後です。

高温で加熱されて内包物が少し痛そうです。

色も変わったのですが、内包物も確実に変化しています。

ここからは、蛇足。。

別に加熱していても美しければ良いじゃないか、と

おっしゃる方には、同じ鉱物で同じ化学組成をもつ人工合成

ルビーか添加物を加えて加工した、加熱処理ルビーでいいと

思います。

私には、宝石としての魅力は感じられませんが。。

宝石を持つ時の姿勢としては、限りあって数が少なくても、

あるものをありがたく崇めながら楽しむ方が、化学技術に

任せて宝石見えるものを作るよりも良いのでは?と思います。

「かけがえのないもの」とは、失うと代わりがないから、かけがえの

無いものだと思います。

宝石以外の宝物といえば、子宝などといいます。

子供は、かけがえのない宝ものだからだと思います。

失うと同じものは、作れないし、自分の命よりも長く残って欲しい

もの。だから宝だと。。。

大きくて加熱処理したルビーよりも、小さくても無処理で美しい

ルビーがいいなと思うのは、子供がありのままの姿で

いてほしいのと良く似た感覚かも知れません。

化学技術は、素晴らしいと思いますが、使わない方がいいところ

もあるのではないでしょうか。


関連記事